雪花白狐姫伝
狐につままれて

狐面の子供

受験まであと半年とちょっとというこの時期に、関東の公立中学校のほとんどは京都に修学旅行にいく。
私の学校でも例外なくそれで決まった。
今日は二日目の自由行動の日。
仲のいい友達と、午後は神社めぐりコース。

「わあ、すごいね……これがパンフに乗ってた千本鳥居なんだ」

「ねえねえ、おもかる石のあるとこ行ってみようよ!」

「見た目とのギャップが強いと願いが叶うんだっけ?」

「それなんかちがくない?」

「ちがくない!……ハズ」

皆で鳥居の前できゃあきゃあと騒いでいると、ふと人影が横切った。
子供?
狐のお面をかぶってるし、着物だし、なんか変なの。

「雪?どうしたの?」

「ふぁい?」

「一人でにやついてて、なんかあったのー?」

「え?だって変な子供がさっきそこ通っていったでしょ?」

「子供?……ねえ、子供なんていたっけ?」

「私は見てないけど」

「嘘、雪ぃ……なんか見えちゃったの?」

「怖っなにそれー!」

「あ!き、気のせいだったかも、うん。気のせいだよ、ごめん、皆」

「本当?」

皆が不安そうにきょろきょろと周りを見回す。
しばらくして、皆ほっと溜息をついて、気のせいかーと納得した。

「それじゃ、行こっか」

皆さっきのことなんて忘れたように笑いながら先をいく。
振り返ると、そこにさっきみた子供がこっちを見て立っていた。
こういうことは、よくある。
皆に見えないものが、見えること。
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