ももいろ
「店長、早紀そんなに悪いんですか?」

あたしは店長に聞いたけど、

「うん、まぁ、俺も詳しくはわからないんだよな。様子見て新しいスタッフ入れるから、みんな、それまでフォローよろしく」

と、これ以上聞くな、みたいな空気にされてしまった。


早紀…どうしたの?

あたしには、何も言ってくれないの?


あたしは、心配で不安で、理由が知りたくて。

仕事帰りに早紀の家にお見舞いにいくことにした。

先輩達も気掛かりらしく、

「閉店の片付けは、やっとくから行ってきなよ。あたしたちも心配してるって、伝えといてね」

と言ってくれた。

あたしはその日、仕事に集中できなかったけど、先輩達がフォローしてくれてだいぶ助かった。

自分のことでいっぱいいっぱいだったから、


気付かなかったんだ、


店長の様子がおかしいことに。





「桃ちゃん、お見舞いにきてくれたの?わざわざありがとうね」

チャイムを押すと、早紀のお母さんが出迎えてくれた。

あまりにも普通なので、あたしは拍子抜けした。

「あの…早紀の具合は」

おばさんは、神妙な顔つきになり、

「そうね、今はちょっとひどいみたいだけど…」

仕方がないわね、というようにため息をついて、

「安定期に入ったら、落ち着くと思うわ。あたしもそうだったし、やっぱり遺伝ねぇ」

とケラケラ笑った。




安定期?





早紀、もしかして。


「早紀!桃ちゃんが来てくれたわよ!」

おばさんは、あたしを早紀の部屋に案内して、

「家から出られなくて暇みたいだから、話相手になってあげてね」

と出ていった。

「桃…来て…くれたの」

早紀はパジャマだったけど、何やらパソコンをいじっていたらしく、起きていた。

少し痩せたみたい。

早紀が少し困った顔をしたような気がしたけど、

きっと急にあたしがきて驚いてるんだ、と前向きに解釈した。

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