【キセコン】とある殺し屋の一日
朝餉を食べ終えると、小袖の上に着物を着て、支度をする。

「よいっちゃん、帯締めて」

同じように着替えた藍が、後ろを向いたまま声をかける。
慣れた手つきで藍の帯を締めると、与一は戸棚から拳銃を取り出した。

ずしりとした、冷たい感触。
エンフィールド・リボルバー。
十五の歳に、藍がくれたものだ。

「藍さん。そういえば、成人のお祝いは、これもらったじゃないですか。色町は、何だったんですか?」

エンフィールドを懐に突っ込み、与一は振り返った。
藍は着物の裾を割って、太股にホルスターを取り付けている。

目も眩むほどの美少女が、着物の裾を割って太股を露わにしているわけだが、そのような格好をしている藍本人も、男である与一も、特に何の反応も示さない。
いつものことなのだ。

「ん~、よいっちゃんを、オトコにしてあげようと思って」

いかにも適当といったように、小首を傾げて言う。

「でも、お祝いになったのかしらね。よいっちゃんが欲情することなんて、ないんだもの」

今度は与一が、無表情のまま首を傾げた。

「欲情・・・・・・」
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