管理人C

訪問者その1-2

17:00

――また、子供の頃に山で遊んでいたときの記憶を思い出していた。
あの頃は本当によかった。空気も水も犠牲者にならず、同等の目線で対話できる。
もう思い出の中にのみ存在する彼らのことを、いつまでも好きでいる。



「交代の時間だぞ」

後ろのドアの開く音が聞こえて振り向く。

「え?」

「私は管理人D。君と仕事を交代する者だ」

私よりすこし年上のDは、そういって、白紙のファイルを手に取り、
中を見る。


「うん。今日は10数人訪問者が来たのか。
手続きもしっかり出来たようだし、偉いぞ」

「え?今日は、訪問者はこられませんでしたが……」

「でも、ファイルに来たと書いているよ」

ファイルを見せてもらうと、訪問者らしき名前が10数個書かれており、
文字がびっしりと書かれていた。

「そ、そんな……私が見たときは白紙でしたよ」
「まあ、そんな日もあるさ。
訪問者が目に見えるとは誰も保証してはくれないし、
ファイルが白紙で見えないこともある」

「え、えぇ……」

頭がどうにかなりそうだった。

「今日は初日で疲れただろう?ゆっくり休むといい」
「は、はい……それでは……」



「……他人は常にいい加減だ。いつも一つのものさしで物事を推し量ろうとする。
管理人にそれほど大差は無いのに、勝手に順位を付けて優劣を知ると、
全て分かったように反応するんだ。それを真に受けていちゃいけないよ」


「どういうことですか?」


「人の身勝手な発言に振り回されるなと、アドバイスしたかったんだ。
どれだけ他人に品定めをされても、仕事をするのは君自身で、
君の能力以外は当てにならないんだよ。じゃあの」


「はい、なるほど気をつけます。」
< 11 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop