遊び人な彼に恋しました。


あぁ―…そうか。


俺は分かってるつもりでいたから、知ろうともしなかったんだ……



さくらのことを、俺はちゃんと見てきたか……?



ちゃんと、理解してやろうとしてきたか……?



あいつのことが大事なのに……


それなのに俺は……



「ねぇ、春先輩……」


「……ん」


「ここを曲がったら家に着いちゃいますね」



――ドキッ


「覚えてますか?あたしとの約束」


「っ……」



「あたし嬉しいです。初めてが先輩で……」



俺は……



俺は………



「ホントに……初めてが春先輩だったら、どれだけ幸せなのか……」



……え。



足を止めて、震えた声でそう言った平田。



ただうつ向いているその姿からは、表情が読み取れない……



ただ、肩が小刻みに震えているのが分かった……



「春先輩……好きです」



「っ……」



「凄く、凄く好きです」



「平田……」



「だからこそ、ツラいです……」



『ツラい』



その言葉は恐らく平田が今まで何度も飲み込んできた言葉なんだろう……



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