失ったモノ
いつまでも元気でいてほしかったわたしは、素直に先生の言葉を受け取り、喜びました。

「…ああ、そうだな。それじゃあキミもそろそろ帰りなさい。帰り道は…分かるかね?」

「ヤダ、大丈夫ですよ。家はそんなに遠くないですし、まだ明るいですから」

わたしはクスッと笑い、頭を下げました。

「それじゃあ先生、また明日」

「ああ…」

休みがちだった先生だけど、ここ最近は学校に来れているみたいでした。

「良かったぁ。今度、先生の所にお邪魔しよっと」

先生は歴史の準備室にいつもいまして、そこで生徒の相談に乗ってあげていました。

校舎の隅にある準備室は静かで、落ち着ける場です。

今度、先生に話を聞いてもらおうと思うと、心は少しだけ軽くなりました。
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