男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-






*

約2時間に及ぶコンサートはあっというまに終わってしまった。

名残惜しそうなファンに笑顔を浮かべて、また俺達に会いに来て!と言えば、

悲鳴に近い歓声があがった。


ステージを降りたメンバーは疲れたような顔をしていた。

けれど、満足そうな表情でもある。

彼等の中には達成感があった。

「終わった〜…」

南がため息をつけば、しっかりしろ と郁が彼を叩く。

「…なんか、俺、今日のコンサートいろんな意味で忘れられないかも。」

陽がそう言えば楓も頷いた。

「…陽。ちゃんと説明してくれ。」

柚希が彼に視線を向ける。ことりの事だと察した陽が説明しようとした時だった。


「それは私から説明しよう。」

突然の声にメンバー全員が振り向く。

「しゃ、社長!?」


「…陽クンには言ったんだが、歌番組の監督から 森山ことり をスカイに入れてくれと頼まれてね。

こちらとしても簡単に入れるわけにはいかないから試させてもらったんだ。」


「試すって…」


「だから、陽クンには身を隠して貰っていた。陽クンのかわりに、君に踊ってもらうためにね。」

社長はことりに視線を向けた。
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