男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
明日は番組の収録があるせいで、家に帰るのは遅くなる。

誕生日を祝ってやることができない為に、

今日プレゼントを渡そうと考えていた。

今日のインタビュー会場は家から近かった為に、

早く帰宅することができた陽は ただいま とつぶやいて家に入る。


「お帰りなさい、陽君。」

今日もテレビ見てたわよ~!と興奮気味に母親は言う。

「・・・ことりは?」

「あの子、部屋に閉じこもってでてこないのよ。」

どうせお腹がすけば出てくるでしょ、と母親が言った。

自分も腹が減っていたし、それもそうかと考えてリビングに向かう。

席につくと用意されていた夕飯を食べ始めた。

テレビに流れていたのは、明日発売されるCDの宣伝のCM。

練習中、耳にタコができるくらい永遠に聞いていた為に

できれば聞きたくなかった。

タン、タン、タン、

リズムよく階段を降りる足音が聞こえてことりが来たんだと察した。

ガラ、

この時間に陽が帰っているとは思っていなかったらしく、

大きく目を見開いて兄を見る。

「あ、ことり。」

「何。」

「これ、」

食べるのを中断させ、プレゼントを手に取ると彼女に手渡す。

「俺、明日収録で夜遅くなるから・・・

明日誕生日だろ?おめでとう。」

「え、」

まさかプレゼントを貰えるとは思ってなかったらしく、

ことりは目を見開いて陽を見た。

そっか、明日は自分と陽の誕生日なのだ。

すっかり忘れていた。

「あ、ありが「え、陽は明日もお仕事なの?」

ことりの言葉を遮り

折角の二人の誕生日なんだから、3人で外食しようと思ってたのに。と

不満そうな声を出す母親。

「ごめん、母さん。」

「お仕事だからしょうがないわね~、

また都合があうときに3人で食べにいきましょう。ね、ことり。」

「・・・。」

「陽には期待してるんだから、これからも頑張りなさいね。」

陽には、という言い方にことりはイライラしてくる。

母親も、まわりの人間も、陽しか見ていない。

「ことり・・・。」

そんな妹の雰囲気に気づいた陽が、心配そうに名前を呼んだ。



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