男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
公園での撮影が終わり、スタッフ全員で撮れた写真をチェックする。
「今日の陽君、表情がぎこちないな。」
スタッフの一人がそういうと、他の人も頷いた。
「いつもの陽さんじゃないみたいですね。」
何かありました?とスタッフが聞いてきた。
「い、いえ...何も...。」
そう答えるのが精一杯で、ことりははにかむ。
「まあ、いいじゃないですか。
次の撮影場所に移動しましょう。」
「は、はい。」
木村は 行きますよ、 とことりに声をかける。
「えー!行っちゃうの!?」
「陽くーん!」
ファンの声が聞こえて、自分が注目されてるのだと強く実感した。
車に乗り込むとき、ふとファンの群れを見る。
小さく手を振ると、歓声がさらに大きくなった。
♪~♪~
移動中、渡された仕事用の携帯が鳴った。
メールが一件、来ている。
「・・・。」
見てもいいのかな、と思いつつも受信ボックスを開くと
そこには郁からのメールが届いていた。
”プライベート用の携帯、電源切ってるの?”
プライベート用の携帯は陽が持っている為に、連絡がつかないのは当たり前だ。
ことりは少し考えて、
”プライベート用の携帯が壊れたから、しばらくは
仕事用の携帯しか使えない。ゴメン。”
と送る。
すると数分後に返信が来た。
”了解。話したいことがある、会えないか?”
「・・・。」
どうしよう。ことりは悩んだ。
「木村さん、雑誌の撮影が終わった後って予定ありましたっけ?」
「いや、無いよ。早くいけば夕方には終わる。」
「わかりました。」
郁やメンバーとは、あまり仲がいいとは言えない気まずい状況なのだ。
郁が話をしたいと言っているなら、話をするべきだろうと考えて
18時からなら空いてる、と言った。