男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-


「二人とも、ごはん食べたの?」

「あ、うん。」

「お風呂入ってきちゃいなさい。柚希君?だったわよね、洋服がなかったら陽君に借りてね...少し、小さいかもしれないけど。」

「有難うございます。」

母親は、何時ものようにふるまっていた。

あまりに違和感がなさすぎてことりは目を見開く。

「柚希、先に入ってきなよ。」

「...ああ。」

ことりに言われて、柚希は脱衣所に向かった。

その際にバスタオルとスウェットを手渡す。

脱衣所に柚希が入って行ったのを見て、ことりはほっと息を吐いた。

「ちょっと、ことり!」

それを確認した瞬間、母親が彼女に詰め寄る。

「どうするつもりなの?バレちゃうんじゃないの?」

「大丈夫だよ、たぶん。」

「だってアンタ、一日中男装してなきゃ駄目になるのよ?」

「あ。」

あまり深くまで考えていなかったことりは、今更になってどうしようと深く悩んだ。

お風呂に入ってからも男装しなければならない。

「な、なんとかなるでしょ。お母さんこそ、バレないように気をつけてよね。」

お兄ちゃんのためなんだから、と付け足すとわかってるわよと母親は言う。

「部屋は陽君の部屋使いなさいね、掃除しておいたから。」

「え?一緒な部屋?」
「当たり前じゃないの。ほかに部屋余ってないんだから。」

まさか、柚希と同室で寝るなんて考えてなかった。

意識すればするほどドキドキしてくる心臓を落ち着かせる。

ことりは頷くしかなかった。
< 76 / 213 >

この作品をシェア

pagetop