後ろ姿は翠色



 ――あたしね、翠先輩が描く綺麗な絵に憧れて入部しちゃったんだけど……

 そうなの、翠先輩は、写実的なのに幻想的な、有り得ないくらいに美しい絵を描く人なのね。

 ――でもね、翠先輩ったら……

「あり? 茜ちゃん?」

 ――何でなのか、奥田恭子先輩ばっかり描いてるのよ……

「ねぇ? 茜ちゃん?」

「え? あ……翠先輩、何ですか?」

「いや、あのさ……黙ってボクを見つめたりしてさ、どうしたの?」

 ――イヤだ、あたしったら……無意識に翠先輩を見つめちゃってたかも……

「あ、あ、あの……翠先輩? 今日は何を描くんですか?」

「しょんなにょ、ひみちゅでちゅ」

「きゃはは! 翠先輩ってば、いきなり意味ワカンナイしぃ~!」

 ノンキに笑っているあたしだけれど、翠先輩が描くモチーフは今日も決まりきっているって分かっているの。

 ――きっと今日も、やっぱり今日も……いつもどおり、奥田恭子先輩の絵を幻想的に描くんだろうなぁ~って……



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