セブンデイズ・リミテッド(仮)


 まさかアイツ、部屋の物あさったりなんてことっ!


「やはりこの時期はコタツじゃの~」


 満足そうに、布団から顔を出す猫。そのあまりにもマッチした姿に、オレは吹き出しそうになるのをなんとか我慢していた。


「そ、そんなにっ。コタツが好きなんですか?」

「うむ。社に備えてほしいもんじゃ」


 あんなところに無理だろうとは思うけど、否定はせず、オレも猫の隣に座りコタツに入った。


「君も入りなよ。寒いだろう?」

「――では、お言葉に甘えて」


 申し訳なさそうに、向かいに座る少女。猫にもこれぐらいの遠慮があってほしいもんだ。


「それで、何の話をするんですか?」

「話すのはやめじゃ。ワシはここで寝るから、構わず団欒せい」

「いや、そんなこと言われても」


 見れば、本格的に寝る体勢に入ってる。揺さぶってみたが、もう既に夢の中なのか、まったく反応がない……。まぁ、騒がれるよりはいいけどさ。





「君は――本当に名前が無いのか?」





 特に話のネタが思いつかなかったから、さっき途中になってたことを改めて聞いてみた。すると本当に無いらしく、今まで天使からは、お前とか君だとか。固定した名前で呼ばれることは無かったようだ。


「呼ばれたい名前はないのか?」

「特にありません。不便だと言うなら、透が好きな名前を付けて下さい」


 急に言われてもなぁ。適当なのを付けるわけにはいかないし。


「……考えておくから、今日のところはここまでってことで」


 まだ頭も回ってくれないし、こんな時にいい名前なんて思いつきそうもないからな。

 時間も時間だし、そろそろ休もうってことになったんだが、あいにく布団は一組しかない。女の子をコタツで寝かせるのは悪いから、オレがここで寝るって言ったんだが、


「私は使いです。そのように気を使うことはありません」


 頑なに、布団を使うことを拒んだ。念の為、オレが使ってたから嫌なのかと聞いたが、そこは問題じゃないらしい。


「原点より上にいくってやつは、かなりの力を使うんだろう? しっかり体を労わらないと」

「余程の時でなければ睡眠は必要ないんです。嗜好のようなものですから」


 これ以上言っても聞いてくれそうにないから、せめて、ここで横になって休むぐらいはということで話はまとまった。
< 62 / 76 >

この作品をシェア

pagetop