変わらない夕焼け
夕焼けにそまる


「あーつっかれた…。」


ある秋の日の夕方

仕事が早くおわった俺は
窮屈だったネクタイをゆるめ、
とぼとぼと潮風の吹く家路を歩いていた


すると、左側の細い細い道から
茶色と白の交じった
毛並みをもった
薄汚れた猫が出てきた


「あ、お前。この前の…。」

その猫には見覚えがあった
おとといの夜、
この辺りの道であったのだ
随分とお腹をすかせているようだったので
ミルクをあげた。

そのまま両方立ち止まり
じっと見つめあっていると

猫は、飽きた。とでも言うように

くぁ。とあくびをひとつ。


「気楽そうでいいよな、お前は」

しゃがみこんで
わしゃわしゃと撫でる

ペットか、欲しいな…

成人をむかえ職にもついたが
母は病気で入院してるし
(もぅあまり長くないという)
父は1年程前に永眠した
兄弟も居ねーし

いわば一人暮らしゆえに
帰っても少し淋しい

「おまえ、うちくるか?」

別に返事など期待してはいないが

そのあとに猫が「ニー」と鳴いたのにふっと笑みがこぼれた


「つってもなぁ…
俺、一日中仕事だし世話する暇がねぇんだよな…ごめんな、猫。」


ふと猫が出てきた道を見やる

あ、この道ってたしか…


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