記憶の中で…


「申し訳ない!!私たちの身勝手で高島家の皆さんに大変な思いをさせてしまった。本当に何とお詫びをしていいやら…。

子を持つ親として、子どもがいなくなる辛さは分かっているつもりです。それなのに、あなた方にも同じ思いをさせてしまいました。

私はどうしようもない人間です。訴えてもらっても構いません。一生かけて償います。本当に申し訳…。」

言葉の途中で高島の父さんがポンと肩に手を置き、「頭を上げて下さい。」と言った。

「私たちはあなたを恨んでなんかいません。むしろ感謝しています。」

「え?」

「確かにいなくなった時は大変でした。あちこち探し回って、心配もしました。ですが、今ここにいる息子は立派に成長して、私たちの目の前にいるのです。それはあなた方夫婦が愛情を持って育ててくれたお陰です。ありがとう。」

その言葉で、押し止どめていた感情が溢れだしたのか、一ノ瀬の父さんはボロボロと涙を流した。

「こんな…私なんかに…感謝なんて…。」

「あなたのお子さんは亡くなられたと聞いています。もし、私があなたの立場だったら、同じ事をしたかもしれません。私たちはナツキが戻ってくれれば充分です。償いなんていりません。」




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