天神学園高等部の奇怪な面々Ⅲ
「……?」

一頻り泳いで海を満喫していた陽。

「なぁ葉也、きょうこ知らね?」

波間をたゆたいながら、岩場で釣りをしている葉也に声をかける。

「…いや、見てないな」

首を横に振る葉也。

確か、更衣室に入っていく所までは見たのだが。

「さては、アレだな」

陽がクシシと笑う。

「水着に着替えたのはいいけど、あまりにも胸がペタンコなもんで出てくる勇気がないんだな」

「…あんまりからかってやるなよ、陽。きょうこ泣いてしまうぞ」

「いや、だってよ…」

たしなめる葉也に、笑いが止まらないといった様子の陽。

「ま、俺も鬼じゃねぇさ。勇気を出して出てきた暁には、生温かい目できょうこの胸を見守ってやると…」

言いかけたその時だった。

「お、お待たせー…」

やや沈んだ調子の声で、きょうこが更衣室から出てくる。

(ぷくく…どれどれ…)

笑いを堪えて振り向く陽、そして葉也。

その口から。

「お…おおおぉおぉぉお…」

思わず声が洩れた。

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