LOVE☆PIECE
中学の時とは違う道を突き進むのは、不思議な感じがした。

というかずんずん道を突き進めるのは、その高校へ何度も何度も行ったからである。琴ちゃん曰く、入学の日だっていうのに、場所がわからずフラフラ歩くなんてことしたくないから、らしい。

「はっ…早く行かなくちゃ、やばいー!!」

「あんた、何してんの?」

走りまくっていた私を尻目に、見知らぬ男はそう言った。
「見てわかんないの?!遅刻してるのよ遅刻!」

口調直すのは目標だったけど、こんなヤツに敬語なんて…使わなくっていいでしょ?
「口悪。相手を考えろよ?」
「あー?!今それどころじゃないから!早くどいてえぇ!」

いつからこんなに口悪くなったんだ。まぁどかないのが悪いんだけどね!

「…うぜぇヤツ」
あ、とうとう怒った?

男が言ったと同時に、そいつの腕は私を捕らえて離さない。
「…何のつもりかなぁ」
私はあくまで平静を保っているように見せかけた。

心の中で今起きていることに対してゆっくり考えると、顔が徐々に熱くなっていく。
「へぇー、お前みたいなやつでも真っ赤になるんだ」
「…」
何それ、私顔真っ赤なの?! どうすりゃいいのよー!
どんどん体から込み上げて来る熱は、顔に集中しているとでもいうような。
「きーてんのか?」

「聞いてます!」
あぁもう…私泣きたい、なんでこうなるわけ!

そう心の中で葛藤している刹那。
そいつの唇が私の唇に一瞬触れた。いや、触れてしまった。
「…へっ、いただき。ウルサイ女にはこれくらいが丁度いーんだよ」

「……………。」
勝ち誇ったような顔をしている彼は、私の顔を覗き見ようとしている。

「どうした?まさか泣いて−「意味わかんない!」

「ちょ、泣くな!」

「何なのよあんた…!!」
「あっ!」
いたたまれず、私は逃げ出した。

いきなりキスされた恥ずかしさと、捕まれた自分は抵抗することができなかったむなしさ。


初めてのキスは見知らぬ男に、奪われました。
ちゃんちゃん、と頭の中で終わった音がする。
最初のキスくらい好きな人としたかったのに…

「はぁ。」

今日はいい日じゃないんだ、と心は落ち込みその場でしばらく嘆いた。
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