大好きな君へ

すると、土方さんが怪訝そうにこちらを睨んで言った


「お前の名前は?」

石神 千奈 です


とは言えないので、もじもじしてると、すかさず藤堂さんが

「石神千奈ちゃんだよ」

と言った

すると、さらにこっちを睨んで

「何で平助が答えるんだ?俺はこいつにきいたんだ」

私は何も言えないので、ただ俯いて


ギュッ


と藤堂さんの着物を掴んだ

それに気づいたのか藤堂さんが助けてくれた

「千奈ちゃんは声が出ないんだ…だから、勘弁して?」

すると、皆驚いた顔をした


そして、それを見かねた近藤さんが言った

「そうだったのか……ところで、千奈君。帰る所はあるのかな?」

帰る所……

東京です!

って言っても通じないので、私は首を横にふった



「そうか……じゃあここにいなさい」


え?

こんな私を置いてくれるの?

私が目をキラキラさせていると、土方さんが


ギロッ


とこっちを睨んで言った


「近藤さん、本当に良いのか?俺ぁ信用できねぇよ」

私はまた、何も言えないので、ただ俯いて、藤堂さんの着物をさらに強く握った



「まあまあ、それに、千奈ちゃんにはここで女中として働いて貰えば良いじゃん、千奈ちゃんもそれでいいよね?」

私は藤堂さんの優しさに感動しながら、もちろんと言うように頷いた


そして、近藤さんが

「よし、では、石神千奈君を、我が壬生浪士組の女中として迎える、では、部屋は……」

と困っていると


ビシッ


と藤堂さんが手を上げて


「はーい!俺と相部屋が良いと思いまーす」

と言った

近藤さんも納得したように頷いた

「よし、部屋は平助と相部屋でいいかな?」

私はもちろんと言うように頷いた

そして、不機嫌そうな土方さんを無視して近藤さんが言い渡した

「よし!今日は、石神千奈君の歓迎の宴だ!」






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