御曹司の溺愛エスコート

ハリー

半分ラザニアを食べ終えた桜に蒼真は聞く。


「桜、ケーキは?」


桜の注意を向けたくて声をかけた。


「くすっ、ご飯食べたばかりなのにケーキは食べられないよ……」

「女の子の甘いものは別腹だと言うだろう?」


桜は首を横に振った。


「ご馳走様でした」


両手を合わせると、蒼真に言った。


「まだ残っている」

「残してしまってごめんなさい……」


そう言うと、再び湖に視線を向けた。


レストランを出ると桜はロビーで書店へはひとりで行ってくると言った。


「俺も行くよ」


桜の一瞬の動揺を蒼真は見逃さなかった。


何か都合の悪い事でもあるのだろうか?


「1人で大丈夫です……」


蒼真は桜の手を握った。


「逃げる前科があるからな。この手から飛んでいかないように一緒に行く」

「もう逃げないから……」


桜のブルーグレーの瞳が蒼真を見つめる。


その瞳に嘘偽りはないように見える。


吸い込まれるような大きな瞳。
吸い込まれて、桜色の唇にキスをしたくなった。



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