御曹司の溺愛エスコート
「アキヅキです」

秋月の名前を言っただけなのだが、ハリーはポカンと口をあけた。


「貴方があの有名なドクターアキヅキでしたか!」


桜は驚いた。


ハリーが知っているほど、蒼真兄さまは有名なんだ……。


蒼真は桜が日本へ帰ることを説明した。


「そうか……日本へ……サクラは良い子だから寂しいよ。日本へ行ってもがんばるんだよ」


苦労が絶えないサクラに幸せになってほしい。とハリーは思っていた。
この青年がサクラを幸せにしてくれる事を願う。


ハリーは蒼真に蔵書を案内し始めた。
その間、桜は昨日やり残した伝票を整理していた。


30分ほどして蒼真が戻って来た。
本を5冊ほど抱えている。
どれも専門の人間が読んでも難しい本ばかりだ。


「ドクターは流石ですな」


紙袋に本を入れて蒼真に渡す。
書店を出る時、ハリーが今までの給料を渡してくれた。


「お世話になりました。ハリー」

「サクラ、近くへ来たら必ず寄って元気な顔を見せて欲しい」


ハリーが寂しそうな笑みを浮かべる。


「はい」


来る事はないと思うけど……。


「もちろん。シカゴへ来る事もあると思います。その時は是非」


蒼真が桜の代わりに約束した。
出張がある時は必ず桜も同行させるつもりだった。


桜は蒼真の言葉を社交辞令だと思い、何も言わなかった。



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