御曹司の溺愛エスコート
静かにノックがあり南条の妻、芳乃が姿を見せた。


「桜様! お久しぶりでございます。お美しくなられて」


芳乃は目に涙を浮かべ桜を見ている。


「芳乃さんも変わりなくお元気そうですね」


自分に会い喜んでくれている芳乃に、先ほどのショックが薄らいでいく。


「ええ、お会いしとうございましたよ」


芳乃は氷水の入ったグラスを桜に手渡す。
その水を桜はごくごくと飲み干した。
火を見た後はものすごく喉が渇くのだ。


「お夕食までごゆっくりお休みください」


南条が言う。


「南条さん、お腹は空いていなくて……時差ぼけみたいです。このまま休んでいいですか?」


そう言うと南条は心配そうな顔をしたが、「皆様にお伝えしておきます」と言い、一礼すると部屋から出て行った。


ひとりになった桜はぐったりとベッドの上に身体を預けた。


愛理さん、綺麗で大人な女性って感じだったな……蒼真兄さまにぴったりな人……。私は小さい頃から蒼真兄さまが好きだった。あの事故が起きるまで、私は蒼真兄さまに大事にされていると思っていた。あの時、冷たい目で蒼真兄さまは私を見た。今でも思い出すのはあの冷たい瞳……。


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