御曹司の溺愛エスコート
「蒼真がいい」

「いきなり呼び捨ては、無理です」

「困ったな それ以外呼ばれたくない」

「……努力します」


たぶんこれからも呼び方は変えられない。


離陸後、少し経つと桜はテレビに興味を持ち、チャンネルを動かして好みの映画にした。


桜が選んだのはアメリカンコメディー。


何も考えずに楽しめる。
実際には見ていないのかもしれない。


蒼真が桜を見た時、瞳が一点だけを見つめていた。


桜の心に闇が見える。
お前をそこから救い出したい……。
3年前の出来事は望を亡くした家族以上に桜の心を傷つけていた。
その原因は私だ。
あの時、なぜ桜を優しく包み込んであげられなかったのだろうか。


桜を見つめる蒼真の表情が苦々しいものとなる。


自然と口から洩れるため息。


気付くと桜は眠りに落ちていた。
キャビンアテンダントからブランケットをもらうと桜にかけてやる。


それから蒼真は医学書を開き、読み始めた。



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