御曹司の溺愛エスコート
風邪をひくのではないかと蒼真は心配したが、案の定、その夜桜は熱を出した。


「思い出したって?」


いきなり立ち止まった桜を蒼真は振り返り聞く。


「一度蒼真兄さまに連れてきてもらったね?」

「そうだな」


あの時、蒼真は20歳だった。
留学中で、たまたま日本に帰っていた時だった。


カッコイイ従兄の蒼真は桜の自慢だった。


「今日もライオンの前で待つのか?」


その言葉に桜は驚いた。


「蒼真兄さまも覚えていたの?」

「もちろん。あの時のことは鮮明に覚えているよ。お前はフランス人形のように可愛かった。だが頑固だった。ライオンを待っていたおかげで熱を出したしな」

「それは覚えてない……」

「今日は許さないからな?」

「あの頃は小さかったから」


あの頃、蒼真が自分の言いなりになってくれるのが幼いながらも嬉しかった。


「頑固は今も変わらない」


桜は面食らった顔になる。


「私が頑固?」

「ああ。自分の胸に聞いてみるといい」


結婚のことを言ってるんだ……。


「蒼真兄さまの頑固さも負けていないとおもうけど」


ボソッと呟くように言うと、蒼真は笑った。


動物園をひと回りしてからふたりは車へ戻った。



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