御曹司の溺愛エスコート
しばらく経つと桜はキッチンへ行った。
朝食の洗い物を全て済ませ、掃除機をかける。


少しして桜は蒼真の書斎を掃除していなかったことに気付いた。
書斎の奥の部屋は着替えに使っている部屋。


奥の部屋に入り、クローゼットをのぞいて見た。
スーツが6着ほどかかっているだけだった。


そのガランとしたクローゼットを見て桜は悲しくなった。


ずっとこのマンションにいる訳ではないんだ……。
蒼真兄さまにとって、ここは愛人を住まわせる仮住まい。


丁寧に掃除機をかけてリビングに戻ると無性に外に出たくなった。
茶色のコートとバッグを手にするとマンションを出た。


行きたい所はない。
マンションが息苦しく感じられて外に出たくなったのだ。
やみくもに歩いていると駅が見えて適当に切符を買って電車に乗った。


どこへ行こう……。
そうだ!
パパとママのお墓へ行こう。


両親の墓は東京の郊外にある。


電車を乗り換え、桜は両親が眠る土地に向かった。


墓を訪れるのは4年ぶりだった。


パパ、ママ……長い間来られなくてごめんね……。


墓は誰も来なかったようで、草は伸び放題でひどいありさまだった。
桜は丁寧に掃除をして墓石をピカピカにし、草をむしり途中で買った花をいけた。


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