御曹司の溺愛エスコート
「……真琴、今日は13時からの研修会だけだったな?」


蒼真は神の手を持つと言われるドクター、あちこちで公演を依頼されている。


「はい。それまで研究所へ行かれますか?」

「ああ。調べたい事がある」


蒼真がダイニングルームへ入って行った。


真琴も離れに戻ろうとした時、父が呼び止めた。


「真琴、芳乃に言って桜様に朝食をお持ちするように言ってくれないか?」

「はい。父さん」


父に言われ真琴はキッチンへ出向いた。



部屋に戻った桜は小さなスーツケースを開けて、きれいに包装された大きな箱を出した。中身は婚約祝いに贈るガラスの花瓶。


移動の際に壊れはしないか気になったが、厳重に包装し機内持ち込みにしたので壊れていないはず。


箱を少し揺すってみる。
音はしない。


その箱を昔使っていた勉強机の上に置き、引き出しを開けてみる。中に以前使っていたメモ用紙が入っていた。


【蒼真兄様へ
急用を思い出しました。
挨拶もしないで帰る事をお許し下さい。
愛理さんとお幸せに。
これは婚約お祝いの品です。
気に入らなかったら捨ててください。
            桜】


ベッドの上にプレゼントを移動させ、蒼真への手紙を置く。


< 25 / 356 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop