御曹司の溺愛エスコート
夜中、桜は目を覚ました。
さっきのように取り乱すこともなく、ぼんやりとした目で隣に眠っている蒼真をみた。


蒼真兄さま……。


桜は全て思い出した。


もちろん望の事も。
自分がシカゴに住んでいた事も。
そして蒼真を愛している事も。


頭がまたズキンズキンと脈打つように痛んだ。


あの時……私は死んでも良いと思った……。


薄明かりの中、自分の方を向いて眠っている端整な顔を見つめる。


蒼真兄さま……。


形の良い唇に思わず触れたくなる。
ピクッと手を動かしてしまった瞬間、眠っていた蒼真が目を開けた。
もともと眠りが浅い蒼真。
ブルーグレーの瞳と目が会う。


「桜、いつから? 気分は?」

「……頭が痛い」


考えれば考えるほど頭が痛む。


起き上がった蒼真は桜の額に手を置いた。


「少し熱があるな」


蒼真は足を床につけると寝室を出た。



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