御曹司の溺愛エスコート
寝室のドアを開けて蒼真と真琴は隣のリビングにいた。
ノートパソコンをリビングに持ってきて仕事をしていた。
桜が起きた時にすぐわかるように。


真琴も桜が心配で夕食後もまだいる。


リビングには2人が使うパソコンのキーボードを叩く音しかしなかった。


その時。


「いやーっ!!!!!」


寝室から悲鳴が聞こえてきた。
はじかれたように蒼真は立ち上がり寝室へ入る。


桜はベッドの上に起き上がり、手を頭に置いたまま振っていた。


「桜! やめるんだ!」


桜に駆け寄るとぎゅっと胸に閉じ込めるように抱きしめる。


「嫌だよ! 行かないで!」


抱きしめられてもなお首を振っている。


「桜、落ち着くんだ」


真琴が診察カバンを持って来た。


蒼真や真琴を見ようともしない桜をベッドに寝かせると細い腕に注射した。
少しの間暴れていた桜だが次第に落ち着いてきたようだ。


「桜、気分は?」


目を開けたまま今度はぼんやりと宙を見つめている。


「望くんはどこ……?」


桜の口から出た言葉に2人は顔を見合わせた。


「望はいない」

「嘘……さっきそこにいた」

「夢を見たんだよ」

「夢……? 望くん、私に謝るの……ごめんねって……」


桜の目から涙がこぼれおちた。


「桜……」


ハンカチで桜の涙を拭い取る。


薬が効いてきて桜は目を閉じた。



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