御曹司の溺愛エスコート
「教えてくれないか?」


蒼真は湧き上がる猜疑心を抑え、静かに聞いた。


「望は……俺に貴方から桜ちゃんを奪うと言っていました」


親友だった望の事を言うのは躊躇した。


「奪う?」


祐二が何を言おうとしているのかまったく分らない。


「貴方と桜ちゃんの事を知ってから望は荒れました。あの事故の日、望から電話が来たんです。望の様子がおかしくて……これから桜ちゃんを奪うと……」

「ちょっと待ってくれ! 望が桜をレイプするって事か?」


蒼真の脳裏に桜の泣き叫ぶ姿が浮かぶ。


「望は覚せい剤を使っていたようなんです」


あの時、自分はオーストラリアに長期間行っており、望の様子は分らなかった。
一度だけ電話を貰い、嬉しそうに桜と長野の別荘に遊びに行くと言って来た。


「厩舎が火事になって望が亡くなったと聞いた時は驚きましたが、桜ちゃんが助かってよかった」


桜は望にレイプされたのか……?


考えるだけで眩暈が襲ってきた。


「大丈夫ですか?」


額に手をやり、ふらついた蒼真を祐二が支えた。


「……話してくれてありがとう」


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