御曹司の溺愛エスコート
「は、はいっ!」


そんな声では聞こえない蒼真はノブをガチャガヤ回し始めた。
桜はシャワーを止めて、バスタオルを手にした。


ノブが壊れそうだ。


蒼真がノブを壊す前に、桜はドアを開けた。
顔だけ覗かせる桜を見て蒼真は安堵した。


「大丈夫か? あまりにも遅いからドアを蹴破ろうと思ったよ」

「ごめんなさい……あの……そこのバスローブを……」


蒼真は壁にかかっているバスローブを取ると、桜に渡した。
一度浴室に引っ込んだ桜は少しして出てきた。


「髪を乾かそう」


隣のパウダールームに桜は連れて行くと、蒼真はドライヤーを髪にあてた。


蒼真にされるままに桜はじっとしていた。


昔も桜の長い髪を「風邪を引く」と言ってドライヤーをよくかけたのを蒼真は思い出した。


鏡の中の桜は頑張って起きてますと言った風で、今にも眠ってしまいそうなくらい目がトロンとしている。
ドライヤーを止めて抱き上げると、桜はびっくりした顔になった。


「降ろして」

「眠いんだろう?」

「蒼真兄さま……」


眠気に逆らえない桜は蒼真の胸に頭を預けた。


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