色に香りに摩訶不思議



「じゃあ、あたし、アナウンス室に入って発声練習をするわね」

「んじゃさ、鴇田さんが発声練習をしている間にさ、イコライジング決めたり、コンプの設定値決めたり、いつでも収録可能な状態を作っとくから」

「うん、ハサマ君、よろしくね」

 ヤル気満々の鴇田倫子さん、サッサとアナウンス室に入ってしまう。

 ――アナウンス室は放送室の中にある小部屋で、放送室よりも防音が殊更効いた小部屋のこと……

「へぇ……発声練習とか、何だか本格的なのね」

 生徒会長の上條麗子さん、少し驚いた様子をボクに見せていた。

「演劇部で例えれば、発声練習もなしに、いきなり演劇を始めたりしないのと同じことですよ」

 ボクはヘッドフォンをして鴇田倫子さんの声を聴きつつ、放送した時に一番聴こえ易い音質になるようにイコライジングと呼ばれる作業をしていた。

「ハサマ君、その例え、とっても解り易いわ」

 加えて、コンプレッサーと呼ばれる機器を調整しつつ、なるべく一定の音量で録音できるよう、その設定値を鴇田さんの喋り方の癖に合わせていた。

「うん……解り易くて……良かった……ですよ」

 ボクは音作りに集中を初めてしまっていたがため、上條生徒会長への返答は生返事になりつつあった。

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