さよなら、ブラック




バンドマンだと思ったその男は、文芸サークル所属で、しかも工学部情報工学科の人間だった。




あの服のセンスとあの軽さ、そして文芸サークルと工学部がどれもミスマッチで、わけのわからない人だと思った。




「じゃあ、ここはキミのおごりね」




そう言って、男は伝票をわたしに差し出した。




「は、はい」




本当にこれはおわびだったんだ、と伝票を受け取りながら思った。



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