あじさい
予感
眩しい陽の光を浴びて
起きるのが貴志の毎日の日課になっていた。


部屋の東側に唯一ある
大きな窓にはまだ
カーテンが掛けられて
いない。


その部屋に
引っ越して来たのは、
半年前の10月中旬。
ワンルームの
何処にでもあるような
アパートである。


家賃の安さにすぐに
飛びついたのだ…。


貴志は眠い目をこすり
ながら、まだ鳴る前の
目覚まし時計の
スイッチを切った。




自分が少し
汗ばんでいるのに
気が付いた



今まで苦にならなかった陽の光には、
貴志のこれからの運命を予感させるような
嫌な熱気を
帯はじめていたのだ…。



勿論貴志はそんな事
知るよしもない。




ふと携帯電話を見ると
‘チカチカ’と
青い光が点滅している。


昨日の夜から
充電し続けていた
携帯電話は
少し熱くなっていた。


携帯電話を充電器から
引き離すと
いつものように片手で
手首を返し
二つ折りの携帯電話を
‘パカ’っと開けた。


同時に液晶には
光が灯る。
< 1 / 4 >

この作品をシェア

pagetop