あじさい
始まり
自然と…
喉元に手が向かった。


ネクタイの結び目に
人差し指を掛け、
そのまま小刻みに腕を
左右に2、3回振った。



今まで
貴志を苦しめていた
水色のネクタイは、
今日の役目が終わったと知ると意外と素直に
緩んでくれた。


「心理的に
水色は人に警戒心を
与えない…。」


と、テレビの中の偉い
先生が言っていたが、
難しい事は…
よく解らない。


貴志はただなんとなく
この色を選んだのだ。


そして、
首にぴったりと貼りつく白いYシャツの
1番上のボタンを外し、外気を服の内側に
取り込んだ。


‘ふう’


と、一つ
大きな溜め息をついて、声を掛けた。


「お疲れさん。だいぶ慣 れてきた?」


「っはい。」


疲れを感じさせない
元気な声が返ってきた。



貴志は今
4月に入ったばかりの
新入社員の
研修をしていた。


彼女は要領もよく、
貴志を困らせる事は
ほとんど無かった。
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