その感情が尽きるまで
「丹波さんは、お母さんや君ら家族からしたら運が悪かったんだろうな。その点はこちらからもお悔やみ申し上げるよ。だけど私共の哀しみと苦しみはそちらの遥か上だ」
首が痛くなる程に見上げていた長身の男の顔からはすっかり頭を垂れて腰元のベルトを見つめていた。このブランドはお客が着けてた、確か、何だったか。思考も止まりひんやりと全身が冷え切っていた。
「弁護士さんか、警察に相談させて頂くということで…」
2人で会話を交わすのがマズいのは分かっている。だからこそ取りあえず助けを呼ぼう。そう思って部屋へ体を向けて駆け出そうとした瞬間だった。
凄まじい力で腕を掴まれ引き戻される。
「私は君のお父さんに殺された澤野彩の婚約者だ」
震えながら振り返ると男の顔がすぐ目の前にあった。
「今日から俺がお前の面倒を見てやるから楽しみにしてな、リサ」
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