恋愛ブランク






「…あー、見ちまった」



今日は先輩達の卒業式だった。まあ先輩達って言っても、そんなに仲が良い先輩なんて居なかったけど。


だけど、先輩達が居ない分、今度は俺らが好きにできる番だし。とりあえず次に俺らが使う教室でも見て回るか、なんてノリで、しかも一人で来たのがまずかった。



「…もう、誰も信用しない…!!」



そんな声が聞こえて、近くの教室を覗き込めば。一人佇む女子が…泣いてる?


卒業式なのに、なんか寂しくて泣いてるっていうより、悲しそう。そして冒頭に戻る。



「うわ…」



黒板に花束をたたき付けると、彼女は床に落ちたそれをしばらくぼうっと見つめてた。



「馬鹿みたい…」



そう言うと彼女は教室から出て行った。間一髪、掃除用具入れの後ろに隠れてバレずに済んだ。けど、ほんとになんなんだろう。


そっと、さっきまで彼女が居た教室に足を踏み入れる。黒板の手前まで進んで、ぐしゃぐしゃになった花束をふと見ると、近くにカードが落ちてた。



「桶川愛子…さん」



なんだか胸がざわついて、何故かあの人の泣き顔が頭から離れなかった。





→next
< 2 / 24 >

この作品をシェア

pagetop