嘘つきな恋




「空ちゃん、こいつね?」

いつかみたいな挑発するような笑顔のたっちゃんが言った。

親指で指すたっちゃんの後ろに目をやると、


「初めまして、佐伯 歩(さえき あゆむ)です」


黒髪の男の子があたしを見て、笑っていた。



きめの細かい色白な肌。

動くたびに、さらさらと音をたてそうな黒髪。

目が合ったらどこまでも吸い込まれそうな真っ黒な瞳。

スラッと伸びた手足と身長。


歩くんが持つもの全てが、綺麗で優しさを放っていた。

知紗があんなに言っていた理由が分かる……。




< 134 / 146 >

この作品をシェア

pagetop