もうひとりの…
親友の由紀子も彼女のことをあまり好きではないようだったが、私ほど頭が硬くないせいか、うまく彼女と付き合っていた。

そんな私たちは、よほどのことがない限り、彼女の話をしない。

ところが、いつも話の中心にいなきゃ気が済まない彼女のことは、嫌でも耳に入ってくるのだ。

「みんな声でかいよね」

私がたまにそう不満を漏らすと、由紀子は決まっていつも言った。

「…嫌いなら、相手にしなきゃいいんだよ」

ごもっともな意見。

「そうなんだけど…」

私は、窓際の彼女の席で集まっている人の群れをチラリと見ながらまた口を開く。

「…何がみんなをあそこまで夢中にさせるのかな?」

私がポツリとつぶやくと、由紀子は眉をひそめてその真意を聞き返してきた。

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