もうひとりの…
⑤遺書
皆が寝静まった静かな夜―

私はひとりリビングに座り、あのピンク色の日記帳を開いていた。

懐かしい彼女の筆跡をひたすら追いつづけている。

「あれ、まだ起きてるの」

トイレに起きた夫が、リビングの明かりに誘われて部屋の入口に立っていた。

「うん… 真奈美の日記帳を借りてきたから、読んでるの」

私がそう答えると、夫は少しだけ微笑んだ。

「答えは、見つかりそうかい?」

「解らないけど… 頑張ってみる」

夫につられて、私も穏やかな笑顔を浮かべていた。

「あまり夜更かししすぎるなよ」

そう言って、夫は寝室に戻っていった。



< 34 / 40 >

この作品をシェア

pagetop