もうひとりの…
(確かあの人…)

彼女の家には父親がおらず、母親が彼女と弟ふたりを育てていた。彼女の両親は、父親のDVが原因で離婚したそうだ。

ふたりの弟達は双子で、見分けがつかないくらいそっくりだった。

彼女はそんな家庭環境の中、とても明るくて聡明だった。しかしその一方で、目立ちたがり屋で、でしゃばりで、偽善者を装っていたように記憶している。

そんな彼女を目にするたびに、私のイライラはピークに達する。そして何とか静まるように自分に言い聞かせるのだ。

"嫌いなんだから、どうでもいい”

よくそう自分に言い聞かせたものだ。

(…よく覚えてるな、私)

つい苦笑いを浮かべ、昔を思い出す。

今だってそうであるはずなのだ。

目立ちたがり屋の彼女のことだ。家が貧乏で粗食だったから細いプロポーションが保てて、たまたま顔が良かったから芸能界で成功できた。

しかしそう思いながらも、結局は彼女の出演する番組を見ているのだ。



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