僕の遊びと俺の迷惑

証拠作り


「ひゃあ、今日も強いね、魔王様!」

軽口を叩きながら俺の太刀筋を避けた勇者はそのままひらりと着地した。

「うるさい。」

俺はそこに爆炎の魔法をぶつけた。大きな爆発音が鳴り響き、砂煙が巻き起こる。普通の人間ならバラバラになってしまうような魔法。

「…もう、魔王様ってば容赦ないんだから!」

そんな声と共に、舞い上がっている煙を吹き飛ばしながら勇者が俺に剣を振りかざした。

「当たり前だろう。」

俺はその剣を自身の剣で受け止めた。魔法は確実に当たったはずなのに、勇者の服が少々焦げ、多少の火傷を負っただけのようだ。本当に人間だろうか。頑丈過ぎだろ。

「じゃあ次はボクの番。」

そう言うと勇者は俺から2、3歩離れ、剣を逆刃で構え、そのまま一気に振りかぶった。

ただ剣を空振りした。ただそれだけのように思えるが、俺は危機を感じ本能的に宙に飛んだ。その判断はあっていた。俺のすぐ後ろにあった玉座が音も無く斜めに真っ二つになったから。

「よく分かったね、魔王様。でも油断大敵だよ。」

勇者の声が、飛んでいるはずの俺の後ろからした。そう認識し、後ろを振り返った瞬間、目の前が爆発した。近距離からの爆発だったため俺は簡単に吹き飛ばされる。

「爆発のお返し!」

後を追って楽しそうな声が聞こえた。

壁に激突した俺は体を起こす。砕けた壁の破片が落ちた。

「さあ、もっと戦おうよ。僕の期待を裏切らないで?」

目を爛々と輝かせて俺を見ている勇者を睨む。何が楽しいのか。お前が来る度にどのくらい被害が出ているのか分かっているのか。魔王だからといってただで修理してもらえるわけじゃないぞ。会計が最近休む暇がないくらいは困っている。

「お前、今度から修理代置いていけ。」

「え、何突然。僕そんなにお金持ってないから無理だよ。」

まあそうだろうな。金を持っているようには見えないし。

「どっかの王様から必要経費って言ってふんだくれ。」

勇者はそれを聞いて苦笑いした。

「…忘れがちだろうけど、僕一応勇者だからね?ほら、皆の尊敬の対象。模範的な行動しなくちゃ。」

「今現在しているのか?それ。」

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