黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
「優鬼が何者かぐらい、俺ら聞く権利はあるよな?」
紳介の言うとおり、傘下のチームのトップにはその理由を聞く権利がある。
それぐらい、わかる。
だから俺は、大まかだけど月夜を幹部にした理由を口にした。
と言ってもそれは、自分でもよくわからない理由だった。
けど、本当にそうだったから他に言いようがない。
月夜を一目見たとき、何かを感じた。
何か、の正体が何かは知らない。
ただ、月夜のあの真っ直ぐで意志の強い蒼い眼差しに、惹かれた。
思った通り、航太たちからも下っ端たちからも好かれ、今では青龍になくてはならない存在にまでなっている。
繁華街の治安だって、今は月夜のおかげで保たれているんだ。
「―――そうか。
理由はわかった。
だけど重要なのは何者か、だ」
「その事だが。
…言えねえ」
「は?!」
「本人の許可なしに、俺らの口から言えることじゃねえんだ」
月夜本人だって、俺らに今までずっと隠してた。
勤の件がなければ、今でも隠し通していただろう。
それほどに他人にバレたくない、重大なことだったんだ。
そんなことを俺が言えるはずじゃねえ。
「優鬼が、どっかのスパイだとかいう可能性はないのか?」
その質問には、航太と咲希斗が即答した。
……そんなはずはない、と。