黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ








「優鬼が何者かぐらい、俺ら聞く権利はあるよな?」





紳介の言うとおり、傘下のチームのトップにはその理由を聞く権利がある。

それぐらい、わかる。


だから俺は、大まかだけど月夜を幹部にした理由を口にした。



と言ってもそれは、自分でもよくわからない理由だった。


けど、本当にそうだったから他に言いようがない。



月夜を一目見たとき、何かを感じた。

何か、の正体が何かは知らない。


ただ、月夜のあの真っ直ぐで意志の強い蒼い眼差しに、惹かれた。



思った通り、航太たちからも下っ端たちからも好かれ、今では青龍になくてはならない存在にまでなっている。


繁華街の治安だって、今は月夜のおかげで保たれているんだ。







「―――そうか。
理由はわかった。

だけど重要なのは何者か、だ」


「その事だが。
…言えねえ」


「は?!」


「本人の許可なしに、俺らの口から言えることじゃねえんだ」






月夜本人だって、俺らに今までずっと隠してた。

勤の件がなければ、今でも隠し通していただろう。

それほどに他人にバレたくない、重大なことだったんだ。


そんなことを俺が言えるはずじゃねえ。







「優鬼が、どっかのスパイだとかいう可能性はないのか?」







その質問には、航太と咲希斗が即答した。

……そんなはずはない、と。







< 168 / 242 >

この作品をシェア

pagetop