黒蝶‐総長♀×総長♂‐ Ⅱ
スパイならば。
俺ら青龍の方から勧誘してくるという話に食いついてこないわけがない。
自分から青龍に入る手間が省けるんだ。
…そんなおいしい話はないだろう。
けど月夜は、すぐにキッパリと断った。
それに……。
あの月夜の目は、濁っていない。
綺麗で力強くて、透き通っている。
そんな目をした奴が、スパイなはずがない。
「黄龍たちは、俺が何者か知りたいんだっけ?」
「つっくん!!
…って、話、聞いてたの?
どっから!?」
「んっと、誰かは知らないけど、〝優鬼は何者なんだ、俺らにも聞く権利があるはずだ〟ってとこからか?」
突然開かれた扉から現れ出たのは、まさに話の中心だった人物…―――――月夜だった。
どうやら、途中から話を聞いていたらしかった。
でも月夜は、疑われて当たり前だという顔で平然と立っていて……。
ドアに寄りかかり、ジッと真っ直ぐに紳介を見据える月夜の姿は、堂々たるものだった。