致死量カカオ



好きな人が出来たら楽しいよって、誰かが言ってた。

確かに楽しかった。

優しくされたら嬉しいし、好いてくれているかもしれない思うと嬉しかった。


好きな人と両思いになったら幸せだよ、と誰かが言ってた。

だけど、それはわからないまま。わからないから私は生きていられる。


手をつないで一緒に笑って話して。
肌に触れて一緒にドキドキして。
あれやこれやそれやして。

そんなこと出来やしないと諦めた頃には、だからこそ妄想に励んだ。

そのくらいは自由なんだから。それ以上なんか到底無理で、そのくせ夢だけはいっぱいで、ギリギリの片思いを楽しむしかなくて。

だから、常に恋をしたかった。

それすら失ったら、私なんにも出来なくなっちゃうから。


まるでそれは依存のように恋を欲した。
ないとそれこそ死んだように感じてしまうから。


それはまるで中毒のように恋を求めた。
ないほうがいいのに一瞬でも楽しめるのならとただひたすらに。

まぁ、惚れっぽいのは多分元々だけど。
妄想も多分、元々だけど。

そんなことはおいといて。

だから、私知らなかったんだ。

恋をしたら楽しくて、死にそうなほどドキドキして胸がきゅーってなって、そのまま死ぬんだと思ってた。



そうならないようにしてたんだけど。
だけど、そんなもんじゃなかったんだ。

恋ってね、すっげぇ辛いんだ。

ドス黒いものが胸を圧迫してそれこそ死にそうなほどなんだよ。
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