致死量カカオ

肩につくくらいの長めの髪は、後ろで簡単に1つにくくられていて、彼の顔も露わにする。

大きめの瞳は目力も強くて私の視線を捕らえる。


180近くある身長で、160にも満たない私は、彼の顔をこんな風に真っ正面で見ることなんかなかった。

そもそも話すこともなかったんだけど。


「……じゃ、付き合う?」


思いがけない言葉が彼の綺麗な唇から風のように私の耳に届いて、意味が分からない私は目を大きく見開いた。


と、同時に一瞬にして「まじで!?」「ひゅー」なんて声が沸き上がり騒がしくなる廊下と教室。

いや、いやいやいや。


なんで?


「……断って下さい」

「は?」

「振って下さい」


一瞬にして静まりかえった校内に、私の二度目の言葉は、驚くほどに響き渡った。


「死にたくないから断って」

「……………は?」


目の前の高城は顔を歪ませた。

まあその気持ちは分からないでもないよね。そりゃそうですよね。だって告白したの私だし。

だけど私にとっては、何で告白を断らないのか不思議なくらいなわけでして。
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