ちゆまど―世界は全て君のために―


倒れはしなかったが、たたらを踏む。


その隙に、イナディアルの弾丸が発射された。


勝負は楽だった。


魔術が使えず、体の自由すらも奪われればこうなる。


「が……」


倒れるシブリール。心臓に三つの穴が開いた。


演奏が終わる。


「はい、ご苦労様」


パチパチと軽い拍手をして、イナディアルはシブリールを踏み越えた。


横たわるユリウスに近づく。


「ああ、やっとこの時が来た……。ずっと夢見てたよ」


感動を含む声を交えて、イナディアルはユリウスに手を伸ばそうと。


右手が、飛んだ。


「あ、れ……」


痛みが来る前に疑問が来た。


「殺したはずなのに」


背後、断頭台を振り下ろした姿のシブリールがいた。


断頭台には血がついており、それはひどく腐って見えた。


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