ちゆまど―世界は全て君のために―


「どちらの世界に行きたいのかしら?」


「これだ。ババアから預かってきた」


金色の天然石を彼はシンシアさんに渡した。


シンシアさんが触るなり、石が砕けて、中から煙が出てきた。


まとまった濃い白には、文字みたいなものが浮き上がる。


「なるほど」


煙がシンシアさんの口の中にはいった。


タバコを吸うみたいに体内に入れて、煙を吐き出す。


出てきた煙に文字はなく、空気中に溶けてしまった。


「分かりましたわ。少々遠いですが、問題はないでしょう。ポチ」


「はい」


ポチがシンシアさんの隣へ。隣にくるなり短い刃を出して――手首を切った。


「ちょ……」


「安心なさって、これぐらいのことでは死にませんから」


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