zinma Ⅰ
「まず言っておくと、私たちは君が考えてるようなことをするつもりはないから。」
そう言ってもらっても、僕はどうしても信じられなかった。
だって、この人は『君を』と言った。
この人たちは僕のことを知っているんじゃないか?
僕に会いに来たんじゃないか?
それに気づいたように、次は女の人が僕を見て言った。
「私たちは、お前が何者か知っている。」
それに僕はもうしゃがみ込みそうになる。
やっぱりこの人たちは僕を探しに来たんだ。きっとあの場所からの使者なんだ。
ついにこの日が………
とそこで男の人が慌てて女の人のほうを見て言う。
「また君はそうやって怖いこと言うんだから。」
また僕のほうを向いてから男の人は言った。
「たしかに私たちは君を知ってるよ。でもほんとに、連れ去ったり傷つけたりはしないから。」
と言うがそんなの嘘だ。
そうやって僕に希望を持たせて、そして裏切って絶望させるというのは、あの場所の人たちの得意な遊びだった。
それに、さっきから男の人のコートの下にちらちらと姿を見せる物。
剣だ。
長い剣。
それにこの人たちの動き。
見ただけでかなり強いことがわかる。
僕はまったく強くないけど、あの3年間のうちに、強い人を見るのには慣れていた。
戦闘に慣れているこの人たちが、僕に会いに来るなんて、理由はひとつしかないじゃないか。
だから僕は、目の前で優しそうな顔をして、平気で嘘をつくこの男をきつくにらんで言った。
「嘘だ。」
それに男の人と女の人が少し驚いた顔をする。だが僕はもう止まらない。