zinma Ⅰ
僕は風が消えて行った森を見つめ、黙ったままだった。
しばらくして、カリアが口を開く。
「………終わったか?」
それに僕はカリアのほうを振り返り、うなずいて、
「はい。わがままを言って、すみません。ありがとうございます。」
と、頭を下げる。
それにカリアが軽くうなずくと、次はファギヌが口を開いた。
「しかし驚いたね。あの風も予想外だったけど、まさか君が魔術を使うなんて思ってなかった。」
と言って、ははっと笑う。
それからファギヌ少し考え込むように腕をくんで、真剣な顔で僕を見つめながら言う。
「…君が魔術を使えるまではしばらくかかると思っていたけど。これは……」
と、そこで言葉を止める。
それにカリアも、右手を腰あて、左手であごを軽く触りながら、ふむ、と考え込む。
「この森が特に魔力が強いのもあるが、それにしては……」
とカリアがつぶやくと、ファギヌがカリアに向かって、なぜか困ったような顔で言う。
「………もしかしたら、レイシアが。レイシアのいる今が、『機』なのかもしれないね…。」
それにカリアも険しい顔になる。
僕はその会話の意味が全然わからなかったけど、なぜかさっきよりも気が楽になっていた。
たとえ風でも、最後にシューと会話ができて。
するとカリアが、まるで何もなかったかのようにいつもの無表情で顔を上げると、言う。
「ん。とにかく、もう行くぞ。目的地まで1週間以上はかかる。」
と言うと、踵を返して、歩き始める。
ファギヌは一度こちらを見て、微笑むと、
「こんなにレイシアが優秀だと、修行が楽しみで仕方ないね。」
と言って、カリアに続いて歩きはじめた。
それに僕も歩こうとして、一度振り返る。
ここで、イルトを捨てる。
僕はしばらく森を見つめ、もう二度振り返らず。
前に進んだ。


