zinma Ⅰ



僕は風が消えて行った森を見つめ、黙ったままだった。



しばらくして、カリアが口を開く。


「………終わったか?」



それに僕はカリアのほうを振り返り、うなずいて、


「はい。わがままを言って、すみません。ありがとうございます。」


と、頭を下げる。



それにカリアが軽くうなずくと、次はファギヌが口を開いた。



「しかし驚いたね。あの風も予想外だったけど、まさか君が魔術を使うなんて思ってなかった。」

と言って、ははっと笑う。


それからファギヌ少し考え込むように腕をくんで、真剣な顔で僕を見つめながら言う。



「…君が魔術を使えるまではしばらくかかると思っていたけど。これは……」


と、そこで言葉を止める。




それにカリアも、右手を腰あて、左手であごを軽く触りながら、ふむ、と考え込む。



「この森が特に魔力が強いのもあるが、それにしては……」


とカリアがつぶやくと、ファギヌがカリアに向かって、なぜか困ったような顔で言う。


「………もしかしたら、レイシアが。レイシアのいる今が、『機』なのかもしれないね…。」


それにカリアも険しい顔になる。



僕はその会話の意味が全然わからなかったけど、なぜかさっきよりも気が楽になっていた。


たとえ風でも、最後にシューと会話ができて。




するとカリアが、まるで何もなかったかのようにいつもの無表情で顔を上げると、言う。


「ん。とにかく、もう行くぞ。目的地まで1週間以上はかかる。」


と言うと、踵を返して、歩き始める。



ファギヌは一度こちらを見て、微笑むと、


「こんなにレイシアが優秀だと、修行が楽しみで仕方ないね。」


と言って、カリアに続いて歩きはじめた。




それに僕も歩こうとして、一度振り返る。


ここで、イルトを捨てる。



僕はしばらく森を見つめ、もう二度振り返らず。




前に進んだ。




< 77 / 77 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

僕らのシナリオ
/著

総文字数/116,357

恋愛(純愛)131ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ドラマなんかを見て、 『純愛』っていうのは知っていた。 いつか素敵な人が現れて、 素敵な出会い方をして、 素敵な告白をされて、 素敵なお付き合いをする。 途中でいくつかの障害なんかも現れて、 それでも愛を貫く。 そういうのはだれでも感動するし 僕もそんな『純愛』のストーリーを 作りたいと思っていた。 でも。 僕が何よりも、今までに作ってきたどんな『純愛』のシナリオよりも心を打つシナリオは。 僕と、彼女のストーリー。 それが『純愛』と呼べるのか。 もしかしたら、これはただのよくある恋の話なのかもしれないけど。 でも僕には、何よりも心を打つストーリーなのだ。 恋とはもしかしたら、そういうものなのかもしれない。
zinma Ⅲ
/著

総文字数/302,672

ファンタジー364ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
金髪の天使。 黒髪の騎士。 ふたりの終わりに向かう旅。
毎日
/著

総文字数/1

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
世界にはいろんなものがあふれていて でもわたしの目に映る世界は わたしにしか見えなくて あなたの目に映る世界は わたしには見えなくて もしかしたらあなたと同じものしか 見えていないのかもしれないけど でも、それすら確かめようがないよね。 あなたに見える緑は わたしに見える青かもしれない あなたに見えるあの曇り空は わたしに見える最高の天気かもしれない だからあなたの感じるすべてのものを わたしが理解することは 一生できないだろう。 だからこそ わたしはわたしでよかったと思う。 あの空を見つめて わたしは涙を流すほど感動する あの広いたんぼを見つめて わたしはひどく穏やかな気持ちになる こんな気持ちになれて こんな感情を抱く人生を歩める それはわたしが わたしだからだろう。 わたしは わたしでよかった

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop