zinma Ⅰ
シューは自分でも驚いていた。
森に祈った瞬間、風がかけていったから。
でもいまのシューには、そんな驚きよりも、とにかくあの祈りが、どうか届いてほしいということしか考えられなかった。
風のかけていった森を見つめ、シューはたたずんでいた。
と、そのとき。
風が、返ってきた。
でも明らかに、さっき自分が放った風とは違った。
さっきの風は、忙しいでいるかのように、強い突風だったけど。
いまやって来た風は、早いけど激しさのない、さわやかな風だった。
その風がシューにぶつかるとき、思わずシューは目をつぶった。
しかし風は、シューに当たる瞬間、ふわりとシューを包み込むようにして、消えた。
そして同時に、その風に巻き込まれていた木の葉や花びらが、ひらひらとシューの周りを舞う。
シューをいたわるように。
シューを抱きしめるように。
優しく。
それにシューは、涙を流した。
イルト。
きっとこれはイルトのマジュツだ。
最後までシューを包む優しさに、シューは涙をぬぐうことなく、地面をぽつぽつと濡らした。
真っすぐ、森を見つめたまま。
いってらっしゃい。
イルト。
森も湖も、いつもよりも穏やかに、澄んでいるようだった。