私はダメ人間じゃない~ネットカフェ難民の叫び~
翌日は体中が痛くて、一歩も動けない状態で目が覚めた。

手足に力を入れ、自分の身体の状態を確認してみたが、とてもあの作業を出来るような状態ではない。


(無理だ)


とは思ったが、ここで音をあげることは中村に負けたことになる。ぎしぎしと軋む身体に鞭打って、その日も仕事をこなした。

もちろん、同僚の男性社員に多大な迷惑をかけてしまったのだが。


工場の門を出てから寮までは15分ほどの道のりだ。それを想像するだけで今日はうんざりした。

何しろ足全体だけでなく腕も、背中も、腰も、歩くたびに悲鳴をあげている。

それでも明日は土曜日だ。週末にゆっくりと休むことを楽しみに門を出た。

そのとき、背後から粘着質な声を掛けてきた者がいる。その声を聞いただけで、思わず体が震えるほどの気持ち悪さだ。


「雪、あした休出だからな」


それは中村だった。


「ええ、聞いてないですよ」

「当たり前だ、たったいま決まったからな」

「そんな、無理です」

「無理ってどういうことだ。ここじゃそんなわがまま通るわけないだろ。それとも田舎に帰るか?」


休日出勤を断ればクビだと、暗にこの男はおどしてきた。


「休日出勤なんて普通は誰でも喜ぶもんだ。じゃ、確かに伝えたからな」


こちらの返事を待つまでもなく、中村はきびすを返して構内へと戻ってゆく。


(冗談でしょ……)


いま立っているのでさえ苦痛をともなうほどの状態なのに、これで仕事などできるのだろうか。


その翌日、私は初めて寝坊していた。

夢さえ見ないほど、ずいぶんと深い眠りについていたのだろう。誰かが部屋に入ってきた気配など、まったく感じなかった。

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