AKANE
「アカネさん、貴女はもう十分よく頑張りました。いいえ、期待以上のことを成し得たんですよ。今、この国は崩壊寸前です・・・。ですが、貴女がこの国や人々を守ろうと動いたことで、魔族と人間の間には、共に闘うことを通して新たな絆が生まれ始めています・・・」
 彼の言うことは正しかった。魔族と人間の長き争いは今、終結しようとしていた。
「それに、“自分探しの旅”の答えは、きっともう貴女の中で出ているのではありませんか? そろそろここいらで旅を終息させませんか、アカネさん」
 確かに、朱音は気付かない間に魔族と人間の長き闘いを終結に導いてきたのかもしれない。
けれど、この地ではまだ闘いは続いている。そして、この闘いは朱音自身が招いたものに他ならないことも事実。この闘いの犠牲になった人達が数多くいることもまた同じであった。ルイやヴィクトル王も例外ではない・・・。
 これ以上誰も死なせる訳にはいかない。そして、誰よりもあの金の髪の騎士を思うと今ここで闘いをやめる訳にはいかなかった。
「駄目です。今わたしがここで投げ出したら、ルイやヴィクトル陛下、多くの人達の犠牲が本当に無駄になってしまう・・・。それに、アザエルはわたしを信じてファウストを追ってくれてるんです・・・」
 朱音が消滅してしまうその時は、もうすぐそこまで迫っていることは、このひどい眠気がよく表していた。
「わたしは悪い男です・・・。どうか許してください。貴女に謝らなければならないことがあります・・・」
 クリストフが何かを朱音に打ち明けようとしたとき、
「クロウ!!」
 突然の呼び声に、二人は振り返った。
「・・・フェル・・・デン・・・?」
 真白い馬に跨った金の髪の騎士が、馬の手綱を引き寄せ、じっと馬上から朱音を見つめていた。
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